Canon A-1


キヤノンAシリーズ2作目(AE-1とAT-1をひとつと見なせば)にしてその最高峰に位置づけられるのがこのA-1です。

デビュー当初はカメラロボット、のちにはスーパーシューターとコピーがつきました。登場時旧FDを標準として登場した最後のカメラでもあります。(有名なスターウォーズ風の広告イラストは旧FDです。A-1デビュー後すぐに1979年にはFDレンズはNewFDへスイッチしていったので、A-1との付き合いはNewFDの方が長いですが…)

このカメラの売りは5モードAEと秒間5コマの2つの「5」です。
5モードAEのキモはシャッタースピード優先、絞り優先の両優先ですがこれはすでにミノルタのXDシリーズが実現していたので、これだけだとインパクトがないと考えたのか、当時としては一眼にはふさわしくないと考えられていたお任せモードのプログラムAEを加えこれら3AEを柱に、無理矢理こじつけともとれるストロボAE、ぱっと聞いただけだと難解な絞り込み実絞りAEで5モードAEとしてました。
秒間5コマは、「連写一眼」のコピーを引っ提げたAE-1がその名とは裏腹に秒間2コマだったのに対し実際に連写速度を誇るに値するスペックでした。Canon普及機の面目躍如といったところでしょうか。

その価格は\88,000とAE-1のざっと6割アップ。しかもこれは当然ボディのみの価格で雑誌の広告でよく見たニッカドパック付きのモードラをつけると更に\68,000必要になり計\156,000。これに当時の標準レンズNewFD50mmF1.4を付けると\188,000!!…中学生のはじめての一眼にはなり得ない雲の上の存在でした。

この憧れのA-1を手に入れたのは最末期の1986年、現行品と考えるとほとんど捨て値の4割引で売られていたものを購入。そしてすぐにモードラ新品を探し始めましたが、ニッカドセットは既に無く、まだ購入可能だった単3セットを手に入れました。

その後、やはりどうしても自分のイメージ通りのA-1にしたくて中古でニッカドパックを手にいれ、中学生のころの憧れを大学生になってやっと実現しました。

AE-1を使い慣れていることもあって結局専らシャッタースピード優先で使っていたので多モードAEであることは単なるステータスに過ぎませんでしたし、カメラの質感としてはAE-1なみ(これは後にNewF-1を手に入れて実感)でしたが、まさにカタログ通りの実機を手にしたときには期待通りだと感じました。

見やすいファインダーとそこに表示される情報はAE機として割り切れば、必要にして十分。しかもシンプルにLEDでデジタル表示されるのがカッコよかったし、今でも十分カッコイイと思います。

シャッタースピード優先AEと絞り優先AEの切り替えはボディ側のモードセレクターで行い、絞り優先時の絞りもボディ側ダイヤルで行うところが当時としては画期的でした。ただしボディ側で設定できる最小絞りはf22まででA-1デビューの後を追うようにラインナップされていったNewFDの望遠系に用意されたf32に対応できていないのはご愛敬。まあいずれにしてもこの時代に既にカメラ側で絞りを設定させるという発想を盛り込んだこと自体、その後の一眼カメラの形態をみるにつけ、時代を先取りしていたんだなぁとつくづく感心します。

このモードセレクターによるシャッタースピード表示と絞り表示の切り替えはどうやっているのかが、カタログをなめ回すように見ていたころからの謎でしたが実際はそんな不思議な機構ではありませんでした。でも液晶表示で切り替えが当たり前になった今では、機械的な表示切り替えなど絶対にあり得ないのでそういう意味では後にも先にもないユニークなものといえるでしょう。

使い勝手に関しては、カメラロボットのコピーが全てを物語っていると思います。1970年代終わりのロボット。露出と巻き上げは自動だと思うべきです。露出に関しては1978年製のロボットが決めることなのでそれなりですがそれに従いましょう。それを補正して自分の意志を入れようとすると非常に使いにくいものになります。つまりマニュアル露出機として使いたいならこのカメラを選ぶべきではありません。露出補正だけなら結構な範囲で自由に設定できますがその値がファインダー内に表示されないので残念ながらあと一歩というところですがこれも使い勝手がよくありません。

カメラが演算した結果をファインダー内にLEDで表示されたデジタル数字で確認したら小難しいことを考えずシャッターを切るのがこのカメラを賢く使うスタイルだと理解します。

もう一方の自動の巻き上げについては是非モードラを装着すべきです。ほとんどの場合そのスピードに意味は無いですがA-1はこのモードラを付けて完成形になると個人的には思います。

デザイン的にはニッカドパックですが、実はこっちだと秒間4コマまでしか出ません。最速を出すなら単3パックが必要になります。ではどっちを揃えるべきかといえば両方でしょうね。ただしニッカドパックのセルはもう交換対応してないようなので注意が必要です。

さてほとんど意味がないといった秒間4〜5コマですが、ここの主題の鉄道写真では有用な場合もあります。3〜5コマ流して撮ればそこそこのタイミングは押さえられるので大きな失敗は避けられます。ただしタイミングは大ざっぱになるしこればかりやっていると思った位置で切る練習にならないので乱用は避けた方が賢明です。でもこの連写、小気味良いので病みつきになりますけどね。ちなみに同じモータードライブMAを装着できるAE-1Pは単3パックを使用しても秒間4コマまでしか出ないのでA-1は秒間5コマを出せる唯一のAシリーズです。

後発のAE-1Pに比べてもA-1はほぼ全てにおいてアドバンテージを保っていましたが唯一ともいえるディスアドバンテージはA-1のスクリーン交換はサービスステーション対応で自分ではできない点にあるといえます。普及機にスクリーン交換の機能を入れたところまでは意欲的でしたが、交換を自分では行えない機構にしたため、実際換える使い方が普及しなかったのでAE-1Pで改善したのではないかと想像します。

多モードAEこそいまではデジタル一眼の最廉価版どころかコンパクトデジカメのそこそこの機種にもつきますが、一方見やすいファインダーと秒間5コマの性能はデジタル一眼の上位機種でしか得られません。そういう意味では単なる懐古趣味以上の存在価値を持っているといえるでしょう。

時代の最先端をいっていたA-1はオーセンティックという言葉とは無縁のカメラです。いま見ればいかにもあの時代のカメラに見えるかもしれませんがペンタプリズム部は後ろに向かって傾斜していない独特のもので、スタイリングも当時の標準より一歩先を行こうととしていたように見受けられます。やはりこのカメラは当時として考えられる範囲で最先端を目指していたハイテク機といえるでしょう。